この素早い対応こそキュナード社が培ってきたものであろう、今日まで数々の伝説が生まれた。ホテル側もこれらの人々を大切にもてなし、急なことにもかかわらず、細やかな気配りを見せた。個人的にはホテルマネージャーとは面識があり、手続き一切を代行していただき、その後も逐次状況が伝えられ有り難かった。
入港遅れの原因について、プリントが早急に配られ、そこには予期せぬ技術上の問題とだけ書かれていたが、後日バウスラスターの蓋の不具合であったことが判明している。
まあ、ここまでは完璧とも見えたが、残念なことに乗船を16時と見込んだキュナードの読みには誤算が生じた。港へのバスは予定時刻を過ぎても来ず、結局迎えが来たのが17時、チェックインに30台以上のパソコンを用意して迅速な乗船手続きを試みたが、システムがトラブって復旧に30分以上かかってしまった。もっとも今回の乗客は予約から2年あまりこの日を待ち続けたという人が大半で、トラブルより、期待が大きく和やかなムードに包まれていた。
私と母の案内されたエリザベススイートは、10デッキ右舷前方の、最も眺めのよい位置を占有していた。2つの広いリビングとジャグジー付バスルーム、ベッドルーム、ウォークインクロゼット、そして7デッキから上を移動することのできる専用エレベーターを備え、前方のリビングには双眼鏡、もうひとつのリビングには大きなバルコニーが付いていた。111uの広さのとても贅沢なつくりである。
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