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October.29.2014

360°水平線

ss Canberra海外ではJoin cruise(クルーズに参加する)という表現をよく耳にしますが、我が国でこの表現はほとんど使われていません。
唯一みんなが参加して船を出そうと言っているのは、PBさんだけです。
このことは、日本のクルーズ事情をよくあらわしているとおもいます。
写真のCanberra(P&O fleet from 1961 to 1997.)は1人でも相部屋で乗船することができ、4人で相部屋を使用した場合、World Cruiseが一人90万円台で可能だったと言いますから、世界中から乗船希望者が集まりました。
クルーズの感動は海や空、生命の触れあいとかイベントの参加などもすべてが本物であります。

我が国には、未だクルーズを輸送であるとする考え方が、根強くあります。
例えば、外国船舶による国内輸送を禁じたカボタージュ (Cabotage) 規制のクルーズへの適用や、旅行業法で言うところの事業者が旅行を造成または手配するための運送サービスにクルーズが該当することなどが挙げられます。
後者は一見分かりにくい制度ですが、運送機関のトラブルに対しては旅行会社の免責事項となります。

クルーズに対する認識不足が、様々なトラブルの元になった例もあります。
RCIのレジェンド オブ ザ シーズが2010年のGWに行った横浜発着クルーズでは、帰港当日に仕事へ向かう乗客がおり、入港後すぐに下船できないことにクレームがあったと言います。(入港後の行動には十分余裕を持ちましょう。)

鳶じつは世界で最も有名な客船と称され、2008年11月11日、Viva La vida(美しき生命)の音楽とともに英BBC放送によりSouthampton出航のFarewellが全世界に報じられたクイーン・エリザベス2は、39年の間に二度漂流しており、サガルビーも晩年は度々トラブルがありました。
「船はエンジンが停まっても浮いていることができる」とは初代飛鳥でキャプテンを務め、4回の世界一周クルーズを指揮したY.H.氏も述べており、「最も安全な交通機関である」と言われるのも頷けます。
予期せぬ場面では情報の不足等からnervousになることもありますが、デマや非協力的な言動など、その場で対応しているクルーやスタッフの妨げとなる行動は慎むべきではないでしょうか。

ss Oceanic限られた船だけがWorld Cruiseに就き、長期の航海に耐えうる設備を有しておりますが、特別な航海ゆえ予期せぬトラブルに見舞われることもあります。
客船は船価が高く、寿命が50年以上に及ぶものもあり、これら個性ある船に親しみを持つ人も多くおります。クルーズ参加者の多くはメリット、デメリットを熟知しており、ハード面の優劣より、貴重な時間を共有できることに価値を見出しています。
我が国はIMO(国際海事機関)に加盟していますので、SOLAS条約等に基づき、我が国に入港する外国船舶に対し、船舶の構造・設備等のハード面に関して監督(PSC)を実施しており、むやみに不安を煽るのは如何なものでしょう。

参加とは一員として加わり行動を共にすることを意味しますから、必ず相手がおり相互理解することが基本になります。
(クルーズ中ツアーグループなど特定のグループの中でのみ活動されている場合、グループに参加しているのであり、クルーズに参加しているとは言えません。)

我が国を取り巻くクルーズがグローバル化していく中で、参加意識を広く持つことは非常に重要に感じておりますが、多くの商業クルーズはステータスとのジレンマにあり、例えば最近よく見かけるのがクルーズ中の料理を撮影、アップしているブロガーと呼ばれる人達等で他人との相席を好まない傾向があるようです。

乗船中毎日wi-fiで情報発信されている方もいらっしゃいます。
一概には言えませんが、クルーズ中のネット依存は異外と若い人よりシニア層の方が多いようです。
ネット情報には落とし穴もあり、緊急時などは混乱を招き、貴重な電力を無駄に消費する恐れもあります。
今世紀に入るまで、船外との通信は無線室を介して行われていました。不要不急な通信は船長が判断するなら、制限も視野に置くべきでしょう。

mv Ocean Dreamクルーズにテーマを持つのは良いことですが、テーマにこだわる必要はないとおもいます。
1936年4月2日、鉄道省在外研究員の一員として日本郵船の欧州航路船、筥崎(はこざき)丸(10,413t)で神戸港を出港した島 秀雄さん(当時36歳)は、「新幹線の生みの親」と称されておりますが、新幹線をつくることを前提に乗船していたわけではありません。
けど彼は、この旅をしたことにより、帰国後自分が役に立てることが何か考えました。
新幹線の誕生はそれから28年後です。

※ PSCとはPort State Controlの略で、日本に寄港する外国船に対する立入検査のことを言います。