Home > 3月 3rd, 2020

March.03.2020

MS Nordstjernen

昨年、ベルゲンを訪れたとき、港の歴史地区に、小さく、黒い客貨船が1隻停泊していたことを覚えてはいるのだが、あまりの人だかりに残念ながら写真などは残っていない。
その船が、1956年生まれのノルウェーの国家遺産、ノールチャーネンであったらしいことを知ったのは、つい最近である。

ノールチャーネンは北極星の意味を持ち、ベルゲン汽船により、ドイツ、ハンブルクのブローム・ウント・フォスで建造(造船番号787)され、フッティンルーテン(ノルウェーの公共沿岸サービスを指し、運営会社としてのフッティンルーテンASとはここでは区別する)に長年使用された全長80.77m、総トン数2,191トンの単発機関を搭載した船である。

装飾はノルウェーの有名な芸術家、Paul Rene Gauguin(ポール ゴーギャンの孫)が手掛け、サロンデッキの旧ファーストクラスラウンジやレストランのバルクヘッド(仕切り)、階段ホールなど、1956年当時のスカンジナビアの見事な木彫りやセラミックアート、絵画を見ることができ、古い照明器具さえ機能している。
カフェの前方キャビネットには、幾つかのオリジナルのベルゲンライン※1)の記念品がディスプレイされている。
オープンデッキにはチーク材を敷き詰め、レセプションパネルにはマホガニーが使用されている。

当時のフッティンルーテンの船の大きさは約1,000tであったから、ノールチャーネンは、1980年代に大型旅客貨物船が使用されるまで、1964年建造のMS Lofoten(2,621t)と共に、ノルウェー西岸航路を代表する船であり続けた。
1983〜84年にBergenの造船所で行われた改装では、メインエンジンが交換され、同時にFirst ClassとSecond Classを廃止、バス・トイレを持たない客室の多くは現在のクルーズ船と比較して小さく、キャビンを71室(おおよそ13㎡〜3.5㎡)に再構築して、D・Eカテゴリーを除くすべてのタイプのキャビンに専用シャワー/トイレ設備が追加された。

2012年にVestland Rederi AS※3)が船を購入したことに関連してノルウェー文化遺産局は、1950年代の船のデザインの傑出した例として保護し、また2013年、ポーランドのGdańsk(グダニスク)の造船所で修理を受けた際、ファンネルの塗装がベルゲンラインのカラーに戻された。
本船はIce Class 1C※2)の耐氷船であり2015年から、毎年夏に、元の所有者であるフッティンルーテンASにチャーターされ、北極圏の北に位置し人の住む最北の島といわれるスピッツベルゲンを起点に、スバールバル諸島の自然に親しむ短期のクルーズを行っている。
※1)高級クルーズとして語り継がれるロイヤル バイキング ラインの最初のパートナーでもあり、同社1番船のロイヤル バイキング スターのオーナーでもありました。
※2)0.4mの厚さの氷がある海域を航行可能
※3)Vestland Marine Sp. z o.o.のブランドであるVestland Classicは2019年に、ノルウェーの海洋高校で訓練船としての役目を終えたSjøkurs(元MS Ragnvald Jarl / 造船番号789)を取得、改装を計画していると伝えられている。同船は姉妹船であるが、ファンネルやマストのデザイン、配置が異なる。

僕は過去に、ストックホルムのベルクスンド機械工房で建造され、夏季の間、ストックホルムからサウザンド諸島を巡る航路に就航している M/S Waxholm IIIという船に乗船しましたが、定期船で周遊する乗客はその昔、船に戻る時刻を汽笛で知り、本船も幾つかの島で、出航5分前に汽笛合図がありました。(1939年公開のめぐりあいという映画では、この汽笛合図が別れのシーンで使われています。)
この船は1961年まで使われた後、1992年〜1994年にかけ改修され、スウェーデンの文化を伝える航路に復帰しました。
アッパーデッキのラウンジとダイニングルームの一部は1903年からのオリジナルです。